「暴落したら怖くて売ってしまいそう」という声をよく聞きます。気持ちはよくわかります。私も2024年8月5日の朝、証券口座を開いた瞬間に似たような感覚を覚えました。
結論として、私は2024年8月と2025年春、2回の暴落でどちらも何も売りませんでした。売りたいという気持ちが全くなかったわけではありません。でも、売らなかった。その理由と当時の心理状態を、できる限り正直に書きます。
インデックス投資を続けていると「暴落時に売るな」という話を何度も聞きます。でも、実際にどんな気持ちで、何を根拠に「売らない」を選んだのか。体験談の形で書いた記事は意外と少ない気がします。この記事がその参考になれば幸いです。

2024年8月5日に何が起きたか【背景の整理】
まず当日の状況を整理します。知っている方は読み飛ばしてください。
1日で約4,400円安・歴史上最大の下落幅
2024年8月5日(月)、日経平均株価は前週末比で約4,451円下落しました。下落幅としては1987年のブラックマンデー(3,836円安)を超え、1日の下落幅として史上最大の記録を更新しました。終値は31,458円で、わずか1ヶ月足らずで10,000円以上下落した計算になります。
原因は複合的です。米国の雇用統計が予想より悪化したこと、FRBの利下げ観測が後退したこと、そして日銀の利上げ実施による円高進行(1ドル141円台まで急騰)が重なりました。米国株も同時に下落し、S&P500は前週末比で3%超の下落を記録しています。
「令和のブラックマンデー」と呼ばれた
翌日の8月6日には一転して約3,217円反発(史上最大の上昇幅を記録)しましたが、その後もボラティリティの高い状態が続きました。メディアでは「令和のブラックマンデー」と呼ばれ、SNS上では含み損の報告や「全売りした」という投稿が相次ぎました。
多くの個人投資家が、恐怖から損切りしたとみられるのがこの局面です。
私のポートフォリオはどうなったか
2024年8月時点の私の資産は、新NISAで積み立てているS&P500インデックスファンド(楽天・プラス・S&P500)が中心でした。2024年1月の新NISA開始を機にS&P500への一本化を進めていて、日本株や高配当ETFはすでに売却・縮小済みでした。
正直に書くと、暴落時の含み損は記録に残っていない
ここは正直に書いておきます。私は資産を月に1回しか記録していません。2024年8月の暴落は、8月5日に急落して翌6日には急反発した、ほぼ1〜2日の出来事でした。だから月末のスナップショットには、あの暴落の谷は残っていないのです。
しかも2024年は前半の上昇と円安で含み益がかなり乗っていた時期でした。1日で資産が大きく目減りするのは確かに見ましたが、ポートフォリオ全体が含み損(元本割れ)になっていたかというと、月次の記録では確認できません。正直に言えば、月末はおそらく含み益のままでした。
つみたて部分が一時的にマイナスへ振れた記憶はうっすらありますが、これも記録には残っていないので断定はできません。だから「含み損が何十万円になった」というような数字を、私はこの記事に書けません。書けないものは書かない、というのが正直なところです。
そして、むしろこれがこの体験の本質かもしれないと思っています。長期で積み立てていると、1〜2日の暴落は月次の記録に残らない程度の「誤差」でしかなかった。世の中にあふれる含み損パニックの日記とは、ずいぶん違う淡々とした体感でした。
翌週以降の回復スピード
8月6日に日経平均が約3,217円反発したのと連動し、S&P500も翌日から回復基調に入りました。8月末時点では暴落前の水準にほぼ戻っており、2024年内に最高値を更新しています。あの1〜2日の谷で慌てて売った人は、この回復の恩恵を受けられなかったということです。

売りたかったか?【正直に書く】
ここが一番書きたかった部分です。「売りたかったか」という問いに対して正直に答えます。
感情として:売りたい気持ちはあった
結論から言うと、「少し売りたい」という気持ちはありました。正確には「今ここで売って、もっと下がったところで買い直せたら効率的なんじゃないか」という考えです。
SNSのタイムラインには「全売りした」「一部利確した」「追加購入のチャンス」という投稿が入り混じり、何が正解なのかわからなくなりそうでした。資産が日々目減りしていくのを見ていると、「このままどこまで下がるんだろう」という不安が頭をよぎります。
投資を始めてまだ2年足らず。本格的な暴落を経験したのは初めてでした。理屈では「売るな」とわかっていても、感情はそう簡単には制御できないものです。
行動として:何もしなかった
ただ、実際の行動として売りませんでした。アプリを確認はしましたが、何も操作しませんでした。理由は複数あります。次の章で整理します。
売らなかった理由と判断の根拠
感情的には揺れていたにもかかわらず売らなかったのは、いくつかの事前準備があったからです。
事前に「売らない」と決めていた
投資方針として、積み立てたインデックスファンドは市場が下落しても売らない、と事前にルール化していました。これは感情が落ち着いているときに決めたルールです。
暴落の最中に判断を下すのは最悪のタイミングです。恐怖が最大化しているときに「売る・売らない」を考えると、感情に引っ張られた判断になります。だからこそ、相場が穏やかなときに「こういう局面では何もしない」と決めておくことが重要だと感じています。
過去の暴落はすべて回復してきた
リーマンショック(2008年)・コロナショック(2020年)・ITバブル崩壊(2000年)……歴史上のあらゆる暴落は、長期的には回復しています。この事実を知っていると、「暴落で売る」という選択がいかに割に合わないかが分かります。
もちろん「過去の実績が将来を保証しない」という注意書きは必要です。しかし、それを言い出すと何も投資できなくなる。私は「S&P500が永続的に回復しない未来は、株式市場そのものの終わりであり、そのときはどんな資産を持っていても同じ」と割り切っています。
生活防衛資金があったから焦らなかった
これが一番大きかったかもしれません。生活費の6ヶ月分は投資とは別の口座に現金で置いていたため、「ポートフォリオが下がっても今すぐ生活が破綻することはない」と落ち着いて考えられました。
投資資金と生活防衛資金を分けていない状態で暴落を経験すると、「いつでも引き出せる資金が目減りしている」という焦りが生じます。これが冷静な判断を妨げます。投資の現金比率の考え方については、別記事で詳しく書いています。
2025年春、もう一度の暴落も売らなかった
暴落体験はこの1回だけではありません。2025年春にも、もう一度大きな下げを経験しました。しかも今度は、2024年8月とは質の違う暴落でした。
2025年春、トランプ政権の相互関税政策をきっかけに、S&P500は過去最高値から約19%下落しました。2024年8月が「1日で急落してすぐ戻った」暴落だったのに対し、今度は数週間にわたってじりじりと下がり続ける展開でした。
このときにやったことは、ひとつだけです。残高を確認して、画面を閉じた。それだけ。売却もしていないし、積立額も変えていないし、リバランスもしていません。
正直、怖かったです。下がり続けるのをただ眺めている時間は、1日で終わった2024年8月よりこたえました。「今売れば損が確定する。でも止めれば、安く買えるはずの機会を逃す」——頭の中で何度もこの天秤が揺れました。それでも、何もしませんでした。
このときも資産は大きく目減りしました。数週間続いた下げなので、目減りの幅は2024年8月より大きかったはずです。ただ、これも月1回しか記録していないので、底でどこまで下がったのかという正確な数字は手元に残っていません。だからここでも、含み損の金額は書きません。
結果として、1〜2日で終わった2024年8月と、数週間続いた2025年春。質の違う2つの暴落を、どちらも売らずに越えられました。
暴落時に「行動しない」を選ぶための事前準備
暴落のたびに「売るべきか」と悩むのは精神的に消耗します。あらかじめ準備しておくことで、暴落中に冷静でいられる確率が上がります。
- 投資ルールを文章化しておく:「どんな局面でも売らない」「積み立てを止めない」など、穏やかなときに決めたルールを書き留めておく。暴落中に読み返すためのメモです
- 生活防衛資金を別口座に確保する:投資資金とは別に、生活費3〜6ヶ月分の現金を確保しておく。これがあると暴落中の焦りが根本的に違います
- SNSと証券口座を見る頻度を決める:暴落中に毎日口座を開いて損失額を確認するのは消耗します。私は週1回だけ確認するルールに切り替えました
- 回復の歴史を調べておく:過去の暴落がどれくらいの期間で回復したかを事前に把握しておくと、暴落中の視野が変わります。リーマンショックでさえ5年以内に回復しています
2つの暴落から学んだこと
2024年8月と2025年春、質の違う2つの暴落を経て、自分の投資行動について改めて確認できたことがあります。
まず、積み立てインデックス投資は「何もしない」が最善の戦略であることを体で理解できた。理屈では知っていても、実際に資産が目減りしていくのを目の前にして「何もしない」を選べるかどうかは別の話です。1〜2日の急落も、数週間の下げも、どちらも売らずに越えたことで、「売らない」というルールへの信頼が強くなりました。
次に、感情と行動を切り離すことの重要性。「売りたい気持ちがある」ことと「実際に売る」ことは別です。感情を否定するのではなく、感情とは別に「行動のルール」を持つことが長期投資を続けるコツだと感じました。
最後に、生活防衛資金の存在の大きさ。2回とも焦らずにいられたのは、投資資金が減っても生活そのものには影響がない状態を作れていたからです。投資の安定は、ポートフォリオよりも「生活の安定」が基盤になります。
よくある質問
Q: 暴落のとき、追加購入はしましたか?
いいえ、通常の積み立てを継続したのみです。「暴落は買いのチャンス」という考え方は理解できますが、いつが底かは誰にも分かりません。追加で現金を投入するより、決まった金額を淡々と積み立て続ける方が心理的に続けやすく、長期的な結果も大差ありません。
Q: 暴落後に「売れば良かった」と後悔しましたか?
後悔はありませんでした。2024年8月は翌日に急回復したため、売っていたら確実に損失が確定していました。「底で買い直す」戦略を取ろうとしていた人は、急回復のスピードに追いつけなかったケースが多かったはずです。2025年春も、結局その後は回復に向かいました。
Q: 次の暴落が来ても同じように行動できますか?
今は「同じように行動できる」と思っています。2024年8月と2025年春の体験が、暴落中に売らない判断を2回実行できた実績になりました。ルールを守り切った経験が積み重なることで、次の暴落でも同じ判断がしやすくなると考えています。
まとめ:暴落で売らないために必要なのは「事前の仕組み」
2つの暴落を振り返ってまとめます。
- 2024年8月5日:日経平均が史上最大の下落幅(約4,451円安)を記録。S&P500も同時下落。ただし翌日急反発し、月末にはほぼ回復
- 2025年春:トランプ関税をきっかけにS&P500が高値から約19%下落。数週間続く下げを経験
- 月1回しか記録していないため、暴落時の含み損は記録に残っていない。長期積立では、日々の上下はその程度の「誤差」だった
- 感情として売りたい気持ちはあったが、2回とも実際には何もしなかった
- 売らなかった理由は、事前のルール・過去の回復実績・生活防衛資金の3つ
- 暴落中に冷静でいるためには、穏やかなときの準備が全て
「暴落で売らないようにするにはどうすればいいか」という問いの答えは、「暴落中に考えない」です。考えるのは前もって。ルールを決めて、生活を守る資金を確保して、あとは積み立てを淡々と続ける。それだけです。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
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