NISA損切り民は実在する?暴落で売った人の後悔と、売らないための判断基準

資産運用

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こんにちは、てぬき最適化ラボ管理人です。

「NISA損切り民」という言葉がトレンドになっています。相場が下がるたびに、NISAで積み立てていたファンドを売ってしまった人たちのことを指す言葉です。

この記事では、インデックス投資家として4年間一度も売らずに積み立て続けてきた私の視点から、NISA損切りすべきかどうかについて正直に書きます。

先に結論を言います。長期のインデックス投資において、損切りという概念は存在しません。NISA口座で含み損が出て売りたくなっているなら、それは損切りではなく狼狽売りです。

なお、個別株の短期売買であれば損切りという考え方があるのかもしれません。ただ、私はインデックス投資一本で個別株はほぼやっていないため、この記事ではインデックス投資に絞って話します。個別株投資家の方には参考にならない部分もあることをご了承ください。

私自身は4年間の積み立てを通じて、NISA口座が含み損になったことはほぼありません。含み益がゼロになった瞬間はありましたが、含み損の状態には入っていません。それは運が良かったというより、インデックス投資を長期で続けていれば含み損は一時的なものだという前提で始めているからです。NISA損切りすべきかどうか迷っている方の参考になれば幸いです。

「NISA損切り民」に何が起きたのか

NISA損切り含み損のイメージ

2024年から2025年にかけて、相場が大きく下落する局面がありました。新NISAでの投資を始めたばかりの人にとって、積み立てたファンドが一気に含み損になる体験は相当なストレスだったと思います。

「このまま持っていてもさらに下がるかもしれない」「早く損を確定して出直した方がいいのでは」という心理から、売ってしまった人が続出しました。これが「NISA損切り民」と呼ばれるようになった背景です。

特に2025年にかけては、円高方向への動きと米国市場の調整が重なる局面がありました。それまで順調に上がってきたS&P500や全世界株式のインデックスファンドが短期間で大きく下落し、新NISAを始めたばかりの方が直撃を受けました。数十万円単位での含み損になるケースも多く、精神的なダメージは相当なものがあったと思います。

気持ちはわかります。資産が目に見えて減っているのを毎日見ていれば、誰でも不安になります。しかし、その判断が正しかったかどうかは、その後の相場を見れば明らかです。売った後に相場が回復したとき、売らずに持ち続けた人との差は大きく開きます。

問題は感情だけではありません。NISAという制度の構造上、損切りには通常の口座にはないデメリットが加わります。それについては後で詳しく説明します。

新NISAが始まって以来、投資を始めた人の数は大きく増えました。それは良いことですが、同時に「相場の下落を経験したことがない新規投資家」も大勢増えたということです。初めて大きな下落を経験したとき、どう行動するかで、その後の資産形成の結果が変わります。

長期インデックス投資に「損切り」という概念はない

world economy growth chart long term upward trend investment

損切りという言葉の意味を整理します。投資における損切りとは、「保有している資産の価値が下がったとき、損失を確定させて売ること」です。ただし、本来の損切りには前提があります。

損切りは「投資仮説が崩れたとき」に使う言葉

短期の株式トレードや個別株投資では、「この企業の業績が回復する」「このタイミングで株価が上がる」という仮説のもとで買います。その仮説が崩れたとき——業績が悪化した、材料が消えた——に損失を限定するために売る行為が損切りです。

損切りとは、投資の前提となる仮説が崩れたときにとる行動であり、「下がったから怖い」という感情に基づくものではありません。個別株であれば、投資した会社が経営危機に陥った場合に損切りの判断をすることには合理性があります。

インデックス投資の仮説が崩れる日は来ない

では、インデックス投資の「投資仮説」とは何か。それは「世界経済は長期的に成長する」という1点です。

S&P500や全世界株式のインデックスファンドを買うということは、米国企業500社・あるいは世界中の企業に分散して投資するということです。この投資仮説が崩れるのは、世界経済全体が永久に成長を止めるとき——つまり、現実的には想定できないシナリオです。

相場が20%下がろうと、暴落が来ようと、それは「仮説が崩れた」ことではなく、長期的な上昇の途中にある一時的な下落です。過去の歴史を見ても、どんな暴落も長期的には回復してきました。リーマンショックも、コロナショックも、時間をかけて回復しています。

実際に数字で見てみます。S&P500は2008年のリーマンショックで約57%下落しましたが、5年後には最高値を更新しました。コロナショックでは約34%下落しましたが、わずか数ヶ月で回復し、その後さらに大きく上昇しています。暴落のたびに「仮説が崩れた」と判断して売っていたら、その後の上昇をすべて取れなかったことになります。

仮説が崩れていないなら、損切りをする根拠がありません。

売るとしたら一択:狼狽売りだ

インデックス投資において、含み損が出たときに売る行為を損切りとは呼びません。正確には「狼狽売り」です。狼狽売りとは、価格の下落に対してパニックになって売ってしまう行為のことです。

損切りは戦略的な行動、狼狽売りは感情的な行動。同じ「売る」という動作でも、まったく意味が異なります。インデックス投資家がNISA含み損で売ることを「損切り」と表現するのは、この区別を曖昧にしています。

「損切りした」と言えば合理的な判断に聞こえますが、インデックス投資においてはただの狼狽売りです。言葉の使い方一つが、自分の判断を正当化するための思い込みになっていることがあります。

NISAで売ると構造的に二重で損をする理由

インデックス投資の観点から損切りに根拠がないことは説明しました。それに加えて、NISAという制度の構造上、損切りには追加のデメリットがあります。

理由①:損失を税務上に活かせない

通常の特定口座では、ある投資で損失が出たとき、同じ年の別の投資の利益と相殺できます(損益通算)。例えば、A株で10万円損して、B株で10万円利益が出たなら、課税対象はゼロになります。

しかしNISA口座では、この損益通算ができません。

理由はシンプルで、NISAは「利益に課税されない」制度だからです。課税の前提がないため、損失を使って税負担を下げる仕組みも存在しません。NISA口座で出た損失は、税務上「ないもの」として扱われます。

特定口座なら損失は将来の税金を減らすカードになりますが、NISAではそのカード自体が存在しません。損失を確定しても、何も得るものがないのです。NISAの制度の仕組みについては金融庁のNISA特設ページでも確認できます。

理由②:非課税枠が消費される

新NISAには生涯の非課税保有限度額として1,800万円の上限があります。NISA口座で何かを売った場合、売却した商品の「取得価額(買ったときの値段)」分だけ翌年以降に枠が復活します。

ここで問題が生じます。100万円で買ったファンドが80万円に下落した状態で売ると、翌年に復活する枠は取得価額の100万円分です。しかし売却で確定した20万円の損失はどこにも反映されません。損切りで失った20万円は戻ってきませんが、翌年に使える枠は100万円復活するため、表面上は枠が戻ったように見えます。ただし、その20万円の損はそのまま確定しているのです。

しかも、枠が復活するのは「翌年以降」です。売った年の同じ枠にすぐ入れ直すことはできません。回復相場が来ても、今年は入れ直せない期間が生じることになります。

損切りすべき場合・すべきでない場合の判断基準

状況 判断 理由
インデックスファンドが一時的に下落している 保有継続 長期では回復する確率が高く、損失を確定させる必要がない
生活費が急に必要になった 売却もやむなし ただし全額売却より必要額だけ売る
個別株の投資仮説が完全に崩れた 損切り検討 インデックスではほぼ該当しない
「もう耐えられない」という心理的な限界 一度立ち止まる 感情での売却は最悪のタイミングになりやすい
投資金額が生活を圧迫している 積立額を減らす 売却より積立額の見直しが先

NISA口座で損切りすると二重に損する具体的な金額

たとえば100万円を投資して80万円に下落した場合(含み損20万円)を考えます。

口座の種類 損切りした場合 その後100万円に戻った場合の利益
特定口座(課税口座) 20万円の損失を確定→他の利益と損益通算できる 20万円の利益に約20%課税(約4万円)
NISA口座 20万円の損失を確定→損益通算できない(税メリットゼロ) 別途NISA枠を消費して再投資が必要

NISA口座の損失は特定口座の利益と相殺できません。売却で損失を確定させた上に非課税枠まで消費する、という二重のデメリットが生じます。

含み損は損ではない

投資において「含み損」と「確定損」は別物です。この区別が感情的な判断を防ぐうえで非常に重要です。

含み損は「今売ったら損になる」という状態であって、売らない限り損は確定していません。相場が回復すれば含み損は消え、やがて含み益に変わります。過去のインデックスの歴史では、長期間保有し続けることで含み損が解消されてきました。

具体的なイメージで説明します。毎月5万円を積み立てて1年間で60万円になったとします。相場が下落して評価額が48万円(20%減)になったとき、売れば12万円の損が確定します。売らずに持ち続ければ、相場が回復したとき評価額は戻り、やがて含み益になります。含み損とはあくまで「今の時点の評価額」であり、売るまでは現実の損ではありません。

一方、確定損は売った瞬間に決定します。売ってしまえば回復する機会もなくなります。インデックス投資において、自ら損を確定させる行為は、長期的な資産形成の観点から見ると合理的ではありません。

私自身、4年間積み立て続けてきて一度も売っていません。相場が大きく動いた時期もありましたが、投資方針として「市場の動きにリアクションしない」と決めているため、NISA損切りすべきかという問いが頭に浮かぶことはありませんでした。結果として、売らずに持ち続けたことが資産形成に繋がっています。

それでも売りたくなる心理とどう向き合うか

含み損が出て売りたくなる気持ちは、理解できます。毎日資産残高を見て、マイナスの数字を目にすれば誰でも不安になります。「もっと下がる前に逃げた方がいい」という声が頭の中に出てきます。

人間の心理として、損失を感じる痛みは、同額の利益を得る喜びより約2倍強いといわれています。行動経済学でいう「損失回避」のバイアスです。含み損が出ているときに「早く売りたい」という衝動が強くなるのは、自然な心理反応です。ただし、その衝動に従うことが、長期投資においては最悪の結果を生みやすいのも事実です。

実際、含み損をきっかけに売った人の多くが「売った直後に相場が回復した」という体験をしています。感情的な行動は、最悪のタイミングに売ることに繋がりやすいのです。

私がこの心理と向き合う方法は一つだけです。投資を始める前に方針を決めておくことです。「相場がどう動いても売らない」という方針を、感情が揺れる前に決めておけば、下落局面でも行動を止められます。ルールがなければ感情に負けます。

実践的な方法として、アプリやマイページを頻繁に確認するのをやめることも有効です。毎日チェックするのをやめて月1回程度にするだけで、感情的な行動は大幅に減らせます。インデックスへの積立は自動化しているのだから、あとは放置するのが正解です。「見なければ不安にならない」というシンプルな事実を活用してください。

下落局面でどう行動するかが、最終的な資産形成の結果を分けます。インデックス投資で長期的に資産を増やした人のほぼ全員が「相場の嵐をじっと持ち続けた人」です。売った人ではなく、売らなかった人が報われる仕組みが、長期インデックス投資の本質です。

NISA損切りすべきかどうかを正しく判断するには、感情が落ち着いている状態で、事前に決めた方針に照らし合わせることが必要です。投資方針の決め方についてはこちらの記事に詳しく書いています。含み損で不安になっている方は、一度読んでみてください。

まとめ:NISA損切りすべきかと迷ったら

NISA損切りすべきかどうかを判断する前に、この記事でお伝えしたことを確認してください。

  • 長期のインデックス投資に損切りという概念は存在しない
  • NISA含み損で売る行為は損切りではなく狼狽売りだ
  • NISAで損切りすると損益通算できず、損失を税務上に活かせない
  • 非課税枠は翌年以降に復活するが、その間に相場が回復しても入れ直せない
  • 含み損は確定損ではない。売らない限り損は確定していない
  • 感情に負けないためには、投資方針を事前に決めておくことが唯一の対策

NISA損切り民という言葉がトレンドになるたびに、制度の使い方の難しさを感じます。NISAは長期・積立・分散を前提に設計された制度です。短期の値動きに反応して売る行為は、その前提を自ら壊すことになります。

含み損が出て怖いなら、一度スマホを置いてください。インデックスファンドは、あなたが何もしない間も世界中の企業の成長を積み上げています。

NISA損切りすべきかどうかを迷っているなら、この記事でお伝えしたことを思い出してください。感情が揺れているときほど、自分で決めた方針に立ち戻ることが大切です。

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